杜門不出の日々、ふと思い出した故事成語「轍鮒の急」。出典は『荘子』で、こんなお話。

 

…昔、荘子こと荘周さんはいたく貧乏で今日の米にも事欠く暮らし。困った挙句にお金持ちの監河公にわずかなお米を恵んでもらいにいくと、「そのうち大金が手に入るのでそこからゆとりのある暮らしむきがたつよう、融通してあげよう」とのお言葉。すると荘周はこんな話を始めます。

「こないだ私が道を歩いていると、後ろから呼ぶ声がするので、振り返ると轍にたまった水のなかに鮒がいて、口をぱくぱくさせながら私に言うのです。『水をひと掬い持ってきてください。干上がって死にそうです。お願いします』と。私が『この後大きな湖のあるところまで行くことになっているから、着いたら湖の水神に頼んで湖水をいっぱいここに送ってやろう』と言いますと、鮒は色をなしてこう言いました。『私はいまわずかな水で生きながらえたいだけ。そんなことを言っているとそのうち乾物屋の店先で私の姿を見ることになりますぞ』と。」…

 

とまあこんなお話です。ずいぶん昔に読んだので、正しくお伝えできていないかもしれません。正確を期したい方は原典に当たってください。

「轍鮒の急」は「涸轍の鮒」とも言います。

今風に言えば、「生きさせろ!」にほかなりません。